火の女
白熱のオートレースのゴール近く、先頭車がもんどりうって横転し、たちまち猛火に包まれた。乗っていた浜野雪雄は、悲惨な死をとげた。この不可解な死後、父雪之助はレース用の車を全部バラし、実用車を専門に作ることにしたが、商売仇の小沢モーターの圧迫に次第に経営が苦しくなった。この浜野モーターのテスト・ドライバー幸一は、浜野家の者と同じように可愛がられ、一人娘きよ子は幸一にほのかな愛情を抱いていた。しかしスピード車製作を念願する幸一は、雪之助の実用車製作と意見が合わず、遂に浜野家を飛び出し、同じテスト・ドライバー仲間のクラブに居候することになった。そのクラブには紅一点の女ドライバーの綾子が居り、仲間同志の約束で綾子には手を出さない鉄則があったのだが、綾子の方で男らしい幸一に近寄ってきた。だが幸一は雪之助ときよ子のことで頭が一杯であった。一方、雪之助は、きよ子の説...