隠密七生記 剣雲碓氷峠の乱陣
-剣雲碓氷峠の乱陣- 八代将軍吉宗は、家康公が尾張家のために遺した秘筥を手に入れようと早くから尾張中納言宗春のもとに隠密を送っていた。その一人、相楽三年は四年の苦節が実を結び野火焼の日、天守閣の鯱の眼球に隠された祕筥を手に入れた。天守閣警固の椿源太郎は同罪に問われたが、相楽と妹信乃とは結納まで交した間柄だっただけに裏切者三平を討ち祕筥を取戻そうと逃れる三平を追った。靭峠で追いついたが三平の刃に深傷を受け急場を薬草売姿のお駒に救われた。お駒の子分辰蔵は祕筥奪還を頼まれ成功したが総髪の武士鬼堂左源太に奪われてしまった。祕筥は左源太の手から沓掛の宿山和屋に旅装を解いた那美姫の前に差出された。那美姫は祕筥を餌に徳川一門の同志争いを煽動、それを機に豊家再興を狙っていた。江戸に向う那美姫の一行に、それとは知らぬ兄源太郎と恋人三平を追う信乃が身を寄せていた。その夜...