往生安楽国
春たけなわ。レンゲ畑で若い男と女が睦み合っている。**の大らかな****。山を越え、峠を越えた山間の小さな村、赤い太陽、咲き匂う花、別れ道、山寺、暮れなづむ山の稜線、まるで童画のように静かで美しい村。人生に疲れ、傷つき果てた人々が、極楽を求めて、この村にやって来る。然し、其処は地獄、きびしい浮世の風が吹いていた。老いて苦しむ夫を、しめ殺した老婆が廃屋にいた。そこへ生み落した赤児を駅のコインロッカーに捨てた、都会の若い女が逃げこんで来る。二人の殺人者の異様な共同生活。故郷を出て旅から旅へ三味線をひいてさすらう女。母を求めてこの村に来た中年男。楽な日なんて一日もなかった、死んだふりして生きて来ましたとつぶやく五十女。そんな人々が各々の想いを抱いてこの村にたどりつく。極楽を求めて人はさすらい、いつも同じところを堂々***しているだけである。安楽の国は果して...