西城家の饗宴
西城晋作は元海軍大佐であったが敗戦後は失業中で、長男浩太郎が銀行へ勤めているほかはこれといって収入の道なくタケノコ生活であった。その家には、妻民江のほか、前記長男夫婦にその子供、戦死した次男の嫁咲子、次女敦子、三男泰三郎と仲々の大家族であった。咲枝は自分も職を求めて働きたいというが、晋作夫婦は咲子に幸福な再婚をさせてやりたいと願っている。敦子は映画のニューフェイス志願で幾度も試験を受けては失敗しているが新劇の研究生になって天気座へ通っている。そこで知り合いになった加取が晋作を劇作家協会の事務局長の職にあっせんした。咲枝は次女藤子の夫鯉口駿介の紹介で酒井三郎と結婚して西城家を去るが、その後藤子は早産して予後が悪くその入院費に敦子のピアノが売られる。敦子は悪質芸能ブローカーの山下の口車にのせられるが危ういところをのがれた。その代わり晋作は山下から敦子のた...